あだ名の人生【電子書籍】[ 池内紀 ]

<p>「あだ名、通称、あるいは身代わりのようにしてつけられた呼び名ーーそれぞれその人の要約にあたるようなもの。

いかにしてあだ名がついたか、事情はさまざまだが、世の中にひそんだ悪ガキの智恵にも似ている。

それを借用すると、個性ゆたかな肖像が浮かび出るのではなかろうか?」誰でも知っている有名人、あるいはあまり世に知られない人物ーー本書は、ただそのあだ名において、みごと人生を一貫した人たちのポートレート集である。

指物の名人・小林如泥や妖怪博士・井上円了、オバケの鏡花、大いなる野次馬・大宅壮一ーーこれらはみな、名の知られた著名人である。

しかし、世に隠れた変人・傑物・天才もたくさんいるーー富士山に憑かれて一生を終えた不二のかしく坊、物騒な幕末にあって花や昆虫に入れ込んだ博物大名・前田利保、文明開化の明治に逆らってランプ亡国論を説いた佐田介石、別府温泉を天下に知らしめたピカピカおじさん・油屋熊八、棟方志功を俗と一蹴した風船画伯・谷中安規等々。

これら有名・無名の24人の肖像を味読しながら試されるのは、わが身のユーモア感覚と器量であろうか。

誰にあっても、あだ名はこわい試金石である。

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